湊かなえの作品を読んでみたいけれど、長編を最後まで読み切れるか不安な人は多いはずです。短編集の『サファイア』なら一篇ずつ区切れますが、短いぶん物足りないのではないかというところも気になるでしょう。
『サファイア』は、宝石の名前を題にした短い話が七篇おさめられた短編集です。320ページに七篇なので、一篇は通学の片道でも読み切れる分量です。
この記事では、作品情報とネタバレなしのあらすじ、どんな人に向いているかを紹介します。筆者が実際に読んだ感想と、Audibleで聴いた感想もまとめました。
新装版と以前の文庫版はどこが違うのか、Kindle Unlimitedで読めるのか、ドラマ化されているのかという疑問にも最後で答えています。
湊かなえ『サファイア』の作品情報
湊かなえの『サファイア』の基本情報は以下のとおりです。表にまとめたのは、2022年に出た新装版のハルキ文庫です。
| 書名 | サファイア(新装版) |
|---|---|
| 著者 | 湊かなえ |
| 出版社 | 角川春樹事務所 |
| レーベル | ハルキ文庫 |
| 発売日 | 2022年8月9日 |
| ページ数 | 320ページ |
| 冊数 | 1冊で完結(短編7篇) |
もともとは2012年に刊行された短編集で、2015年に文庫化されたあと、2022年に新装版が出ました。七篇はすべて宝石の名前が題になっています。
湊かなえ『サファイア』のあらすじ
舞台は現代の日本です。宝石の名前を題にした短い話が七篇おさめられていて、篇ごとに別の語り手が自分の側から出来事を語っていきます。
表題作の「サファイア」は、二十歳の誕生日を控えた「わたし」の話です。「二十歳の誕生日プレゼントには、指輪が欲しいな」と恋人に人生初のおねだりをすると、彼は「やっと、自分から欲しいものを言ってくれた」と喜んでくれました。
ところが彼は、誕生日の前日、待ち合わせ場所に現れませんでした。指輪をめぐるこのすれ違いが、表題作の入口です。
もう一篇、「真珠」は聞き役に回った「私」の話です。五十歳の主婦・林田万砂子が、子ども用歯磨き粉「ムーンラビットイチゴ味」がいかに素晴らしいかを得々と語りはじめ、その長話に「私」が付き合うところから始まります。
おさめられているのは、この七篇です。
- サファイア(表題作)
- 真珠
- ルビー
- ダイヤモンド
- 猫目石
- ムーンストーン
- ガーネット
湊かなえ『サファイア』はこんな人におすすめ
『サファイア』は、こんな人におすすめです。
- 通勤や通学の片道で一話読み切りたい人
- 長編を読み通す時間がとれず、短い分量から読書に戻りたい人
- はじめて湊かなえを読むので、短い話で作風を確かめたい人
一篇は単純に割れば40ページ台で、電車を降りるまでに一話が終わります。栞を挟んだまま何日も置いて筋を見失う、ということが起きません。読書から離れていた人が習慣を戻すきっかけにも使えます。
逆に、腰を据えて長い物語に沈みたい人には、やや物足りないかもしれません。
湊かなえ『サファイア』を読んだ感想
筆者がはじめて読んだのは大学生のころで、通学の電車と大学の空き時間で少しずつ進めました。通算では1回、最後まで読んでいます。
よかったところ
いちばん助かったのは、一篇ごとの区切りのよさです。通学の片道でちょうど一篇読み終わるので、続きを翌日に持ち越すもやもやがありませんでした。重い篇のあとに毛色の違う篇が来る並びも、読み進めるうえで助かりました。
宝石の名前がついた題を見て、どんな話なのか想像しながら読むのも面白かったです。表題作の「サファイア」では、二十歳の誕生日にほしいと言った指輪がどう絡んでくるのかが気になって、先へ進む手が止まりませんでした。
感心したのは、語り手の一人称の生々しさです。自分に都合のいい理屈をすらすら並べていくところや、なんでもない話のあいまに悪意がさらっと混ざるところで、何度もぞわっとしました。篇ごとに語り手の年齢も立場も変わり、舞台も毎回入れ替わるので、七篇を通しても飽きませんでした。
読みながら苦笑いしたのは、「真珠」で林田万砂子の長話を聞かされる「私」の受け答えです。五十歳の主婦としてあまりに近所にいそうな造形で、自分の周りにもこういう人がいると思い当たりました。
合わないと感じたところ
七篇のうち「猫目石」と「ガーネット」は、最後まで好みに合いませんでした。話の運びが自分の好きな方向ではなく、後味も重く、短いぶん入り込む前に終わってしまった、というのが正直なところです。
読み続けるのがしんどい日もありました。一篇読んだところで本を閉じた日もあれば、重いと思いながらそのまま次の篇に進んだ日もあります。
Audibleで湊かなえ『サファイア』を聴いた感想
筆者は文庫で一度読んだあと、大学生のときにAudible版を通しで1回聴きました。聴いていたのは通学の電車と、車を運転しているときです。再生速度は1.2〜1.5倍まで上げていました。

よかったところ
手がふさがっていても物語が進むのは、素直に楽だと感じました。ハンドルを握っているあいだにも話が進んでいくのが、単純に気持ちよかったです。
文字で読んだときより、情景が浮かびました。とくに語り手が心の中で語っている部分は、声になったぶん距離が近く、聴いていて落ち着かない気持ちになりました。
人物同士の会話のやり取りも、間や調子が声で分かるぶん想像しやすかったです。
ナレーションの永作博美が登場人物を読み分けているのも、聴いていて気持ちよかった点です。全体としては淡々とした読み方なので、移動中でも耳が疲れませんでした。
合わないと感じたところ
読み分けはされているのに、誰のセリフなのか分からなくなる場面がありました。篇が変わって語り手が入れ替わる冒頭は、声の主を掴むまで毎回もたつきました。
厄介だったのは、同じ篇で複数の人物が続けて話す場面です。どちらの台詞なのか迷いました。運転中は戻せないのでそのまま聴き進め、気になったところはあとで文庫を開いて確かめました。
自分のペースで止まって考えられないのも、紙との違いです。「真珠」の長話が何を言いたいのか整理したくなったときと、人物の関係を並べ直したくなったときは、先へ進んでいく音声がもどかしかったです。
湊かなえ『サファイア』を無料で読む方法
『サファイア』を費用をかけずに楽しむなら、Audibleの無料体験を使う方法があります。
Audibleでは聴き放題の対象です(調査時点)。再生時間は9時間1分です。
Audibleは初回30日間が無料で、無料期間内に退会すれば費用はかかりません。無料期間が終わると月額1,500円で自動更新されます。
再生時間から計算すると、往復1時間の移動なら9日ほどで聴き終わる分量です。短編集なので、一篇ずつ区切って聴く形にも向いています。
湊かなえ『サファイア』に関するよくある質問
Kindle Unlimitedで読めますか?
Kindle Unlimitedの対象外です(調査時点)。読み放題では読めないため、Kindle版は単品購入になります。
読み放題の対象作品は入れ替わるため、購入前に商品ページで確認してください。冒頭だけであれば、Kindleストアの無料サンプルで試し読みできます。
新装版と以前の文庫版は何が違いますか?
収録作は変わりません。どちらも表題作「サファイア」を含む全七篇で、ページ数も同じです。
違うのは表紙です。以前の文庫版は2015年5月、新装版は2022年8月9日に出ています。中身は同じなので、どちらを買っても読める内容は変わりません。
ドラマ化されていますか?
収録作の「ムーンストーン」が、2016年に放送されたオムニバスドラマで映像化されています。主人公を演じたのは、Audible版で朗読を担当している永作博美です。
短編集が丸ごと映像になったわけではないため、七篇すべてをドラマで追うことはできません。
まとめ
湊かなえの『サファイア』は、宝石の名前を題にした七篇がおさめられた短編集です。一篇の分量が短いので、通勤や通学の片道でも区切りよく読み進められます。
篇ごとに語り手が入れ替わり、その一人称が生々しいところが読みどころです。ただし後味の重い篇もあるため、一気に読み切るより一篇ずつ区切るほうが向いています。
Kindle Unlimitedの対象外ではあるものの、Audibleでは聴き放題の対象です。移動中に物語を進めたい人は、30日間の無料体験から試してみてください。
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