人の目が気になって言いたいことを飲み込んでしまう。頼まれると断れない。そういう息苦しさの正体を、アドラー心理学の考え方で言い切ってしまうのが『嫌われる勇気』です。
この記事では嫌われる勇気の要約を、本が扱う5つの考え方に絞って紹介します。哲学者と青年の対話だけで進む本なので、筋を追うだけなら難しい言葉は出てきません。
あわせて、読んだ内容を実生活でどう使うかと、Audibleの聴き放題で無料で聴く方法までまとめました。
筆者は学生のころに通学の電車で音声版を聴き、数年たってからはじめて紙の本で読んでいます。両方の感想も載せているので、どちらで読むか迷っている人の判断材料にもなります。
嫌われる勇気の結論を一言でいうと
この本の結論は、他人の課題を引き受けるのをやめれば、対人関係の悩みは消えるということです。
タイトルだけを見ると、人に嫌われる態度をすすめる本のように読めます。中身は逆で、嫌われることを目指せとはどこにも書いていません。
自分の課題を生きようとすれば、結果として誰かに嫌われる可能性は残ります。その可能性ごと引き受ける覚悟のことを、この本は「嫌われる勇気」と呼んでいます。
だから読み終わって手元に残るのは、人に強く出るための技術ではありません。どこまでが自分の責任で、どこからが他人の責任なのかを線引きする基準です。
嫌われる勇気の書籍情報
『嫌われる勇気』の基本情報は以下のとおりです。
| 書名 | 嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え |
|---|---|
| 著者 | 岸見一郎、古賀史健 |
| 出版社 | ダイヤモンド社 |
| レーベル | 単行本(ソフトカバー) |
| 発売日 | 2013年12月13日 |
| ページ数 | 296ページ |
| 冊数 | 1冊で完結 |
著者は2人います。岸見一郎は西洋古代哲学を専門とする哲学者で、1989年からアドラー心理学を研究してきた人物です。
読みやすい語り口を作ったのはライターの古賀史健で、聞き書きの手法で対話篇の形にまとめています。刊行から10年以上たった今も、Amazonのビジネス実用本で上位に入り続けている本です。
嫌われる勇気の要約
『嫌われる勇気』は、哲学者(哲人)と青年の対話だけで進みます。5つの夜に分かれていて、夜が進むごとに話が積み上がる作りです。
扱われている考え方は、大きく次の5つに整理できます。
- 過去のトラウマが今の自分を決めているわけではない
- すべての悩みは対人関係から生まれる
- 他人の課題と自分の課題を切り分ける
- 対人関係のゴールは共同体感覚に置く
- 「いま、ここ」に集中して生きる
過去のトラウマが今の自分を決めているわけではない
アドラー心理学は、トラウマの存在を否定します。
過去の出来事が原因で今の自分がある、という説明を取りません。代わりに、今かなえたい目的に合わせて過去の出来事を持ち出している、と考えます。
たとえば人に会いたくないとき、つらい経験が原因で外に出られないのではなく、外に出ないという目的のために不安という感情を用意している、という見方です。
この見方を受け入れると、過去が変わらないままでも今から変われるという話になります。本全体の土台にあたる考え方です。
すべての悩みは対人関係から生まれる
2つめは、人間の悩みに例外はないという主張です。
孤独も、劣等感も、成績や収入への不満も、比べる相手がいてはじめて悩みになります。ひとりだけの世界なら悩みは生まれない、というのが出発点です。
ここから、悩みを解くには自分の内側をいじるのではなく、他人との距離の取り方を変えるという方針が出てきます。次の課題の分離につながる部分です。
他人の課題と自分の課題を切り分ける
本の中心にあるのが「課題の分離」です。
ある問題について、その結末を最終的に引き受けるのは誰かを考えます。引き受ける人が自分でなければ他人の課題なので踏み込まない、という線引きです。
たとえば勉強しない子どもがいるとき、勉強しなかった結果を引き受けるのは子どものほうです。だから親の課題ではない、と切り分けます。
あわせて、承認欲求そのものを否定します。認められるために動くと、他人の期待に沿って自分の行動が決まっていくためです。承認を求めることが、そのまま不自由につながるという指摘になります。
この夜には、対人関係のカードはいつも自分が握っている、という言い方も出てきます。相手が変わるのを待つ必要はない、という意味です。
対人関係のゴールは共同体感覚に置く
4つめは、課題を切り分けたあとどこへ向かうのかという話です。
分離すると人は孤立しそうに見えますが、本の答えは逆でした。自分がより大きな共同体の一部だと感じられる状態を目標に置きます。これを共同体感覚と呼びます。
出発点は、自分は世界の中心ではないという前提です。中心にいると思っていると、周囲が自分の期待に応えないことがそのまま不満になります。
目の前の関係がうまくいかないときは、より大きな共同体の声を聴く。学校や職場だけが世界ではない、という視点の切り替えをすすめています。
「いま、ここ」に集中して生きる
最後は時間の使い方の話です。
人生を線ではなく点の連続としてとらえます。過去にも未来にも今の自分は手を出せないので、いま、ここに集中する、という結論に落ち着きます。
遠い目標を立ててそこへ向かう生き方ではありません。今日の一日をきちんと生きた結果として、どこかに着いているという順序で考えます。
あわせて、自己肯定ではなく自己受容という区別が出てきます。できない自分を無理に肯定するのではなく、できないままの自分を受け入れて次の一歩を選ぶ、という違いです。
嫌われる勇気を実生活でどう活かすか
読んだあとに手をつけやすいのは、次の3つです。
- 目の前の悩みを「これは誰の課題か」で分ける
- 相手の期待に合わせて自分の行動を決めるのをやめる
- 役に立てている感覚を、自分の内側で確認する
1つめは紙に書き出すと早いです。抱えている悩みを並べて、結末を引き受けるのが自分か相手かで印を付けていきます。相手の側に印が付いた項目には、こちらから手を出しません。
2つめは断る場面で効きます。「断ったら気を悪くするだろうか」で決めるのをやめて、自分がやるべきかどうかだけで決めます。相手がどう感じるかは相手の課題という切り分けです。
3つめは分かりにくいところです。認められた回数で自分を測るのをやめると、代わりの基準が必要になります。本が置いているのは、誰かの役に立てているという感覚を自分で確かめる、という基準です。
ただし3つを同時に始めると続きません。課題の分離だけを1週間試すところから入るのが現実的です。
嫌われる勇気はこんな人におすすめ
『嫌われる勇気』は、こんな人におすすめです。
- 職場や学校の人間関係で消耗している人
- 頼まれ事を断れずに抱えてしまう人
- 自己啓発書をまだ1冊も読んだことがない人
296ページで、全体が対話で進むため専門用語はほとんど出てきません。心理学の予備知識がなくても最後まで筋を追えるので、この分野の1冊目として選びやすい本です。
逆に、明日から使える手順やテンプレートを求める人には向きません。書かれているのは考え方の枠組みで、具体的に何をするかは読んだ人が決める作りになっています。
嫌われる勇気を読んだ感想
筆者がはじめて触れたのは学生のころで、通学中に音声版を聴いたのが最初でした。そのとき聞き落とした箇所が引っかかったままになり、ここ数か月でようやく紙の本を1回通して読みました。
よかったところ
読んでいちばん引っかかったのは、承認欲求を否定してくるところです。認められたいと思うこと自体を切り捨てられるので、最初は反発しました。
それでも読み進めるうちに思い当たりました。仕事でも学校でも、やるかどうかを人の反応で決めていた覚えがあり、言い切られたぶんだけ逃げ場がなかったのが印象に残っています。
もうひとつ残ったのは、対人関係のカードは自分が握っているという一文です。漠然と抱えていたモヤモヤが、相手待ちをしていただけだったと形になったのを覚えています。
ただ、同じ一文には引っかかりも覚えました。言い方を変えれば全部こちらの責任だと言われているようにも感じて、素直には受け取れませんでした。
実際に試したのは、「あの人」の期待に合わせて決めるのをやめるという1点だけです。断る場面で使ってみて、迷っている時間は前より短くなりました。
合わないと感じたところ
後半に入ってから、青年の反論がくどく感じました。共同体感覚の話に移ったあたりは、同じ抵抗を別の言い方で繰り返している印象です。
同じ話が何度も出てくるところは読み飛ばしました。先に結論が分かっているのに、青年が納得するまで付き合う形になるためです。
Audibleで嫌われる勇気を聴いた感想
学生のころ、通学の電車とバスのなかで、再生速度を変えずに通しで1回聴きました。
よかったところ
聴いてよかったのは、哲人と青年が別々の声で読み分けられている点でした。朗読はてらそままさきと金野潤の2人が担当しています。
対話だけで進む本なので、どちらの発言かを取り違えると話が追えなくなります。声が分かれているだけで、紙で読むより発言者を迷わずに追えました。
読み分けがいちばん効いたのは、議論が熱くなる場面です。青年が食い下がって応答が短く行き来するところでも、声の違いで流れが途切れませんでした。
合わないと感じたところ
止まりたいところで止まれないのがつらかったです。とくに「いま、ここ」を真剣に生きるという話のとき、自分の今の過ごし方と照らして考えたいのに、話だけ先へ進んでいきました。
混んだ車内では聞き落とすこともありましたが、手が出せないので戻さずそのまま聴き進め、分かった範囲だけで先へ行きました。
嫌われる勇気を無料で聴く方法と読む方法
『嫌われる勇気』を費用をかけずに読むなら、Audibleの無料体験を使う方法があります。
Audibleでは聴き放題の対象です(調査時点)。再生時間は6時間59分で、2人の朗読で収録されています。
Audibleは初回30日間が無料で、無料期間内に退会すれば費用はかかりません。無料期間が終わると月額1,500円で自動更新されます(調査時点)。
再生時間から計算すると、往復1時間の通勤や通学なら7日ほどで聴き終わる分量です。
紙や電子で読む場合は単品購入になります。読み放題では読めないため、文章で読むなら無料の手段はありません。
聴き放題の対象作品は入れ替わります。聴きはじめる前に、商品ページで対象かどうかを確認してください。
嫌われる勇気に関するよくある質問
嫌われる勇気は何歳から読めますか?
ふりがな付きの版はなく、中学生以上なら文章そのものは読めます。会話文が中心で、心理学の専門用語もほとんど出てきません。
ただし扱っているのは職場や家族との関係が前提の話です。読んで手応えが出やすいのは、人間関係で実際に困った経験があるあとになります。
Kindle Unlimitedで読めますか?
Kindle Unlimitedの対象外です(調査時点)。読み放題では読めないため、Kindle版は単品購入になります。
読み放題の対象作品は入れ替わるため、購入前に商品ページで確認してください。冒頭だけであれば、Kindleストアの無料サンプルで試し読みできます。
文庫版は出ていますか?
文庫版は刊行されていません(調査時点)。出版社が用意しているのは単行本と電子版の2つで、持ち運びやすい判型を選びたい場合は電子版かAudible版になります。
『幸せになる勇気』とどちらを先に読むべきですか?
『嫌われる勇気』が先です。『幸せになる勇気』は副題が「自己啓発の源流「アドラー」の教えII」で、2016年2月26日に出た続編にあたります。
登場するのは同じ哲人と青年で、前作から数年後の再会という設定です。順番を入れ替えると話の前提が抜けます。
英語版はありますか?
あります。『The Courage to Be Disliked』というタイトルで刊行されていて、日本語版と同じく岸見一郎と古賀史健の共著です。
まとめ
『嫌われる勇気』は、他人の課題を引き受けるのをやめれば対人関係の悩みは消える、という一点を5つの夜にわたって説く本です。トラウマの否定から始まり、課題の分離を経て、共同体感覚と「いま、ここ」に着地します。
手順書ではないので、読んだだけでは何も変わりません。まずは課題の分離だけを持ち出して、断る場面で1週間使ってみるところからで十分です。
Kindle Unlimitedの対象外ではあるものの、Audibleでは聴き放題の対象です。哲人と青年が別々の声で読み分けられているので、対話の本としては音声との相性がよい1冊でした。移動時間に読書をあてたい人は、30日間の無料体験から試してみてください。
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