ドラマで『陸王』を知って、原作の小説も読んでみようか迷っている人は多いはずです。ただ、集英社文庫版は700ページを超えます。会社を舞台にした小説を読み慣れていないと、最後まで読み切れるのかは気になるところでしょう。
小説『陸王』は、池井戸潤が埼玉県行田市の足袋業者「こはぜ屋」を舞台に書いた企業小説です。足袋づくり百年の老舗が、その技術を生かしてランニングシューズの開発に挑みます。
この記事では、作品情報とネタバレなしのあらすじ、どんな人に向いているかを紹介します。筆者が実際に読んだ感想と、Audible版を移動中に聴いた感想もまとめました。
Kindle Unlimitedの読み放題で読む方法や、こはぜ屋にモデルはあるのか、続編はあるのかといった疑問にも最後で答えています。
小説『陸王』の作品情報
小説『陸王』の基本情報は以下のとおりです。いま手に入りやすい集英社文庫版をもとにまとめました。
| 書名 | 陸王 |
|---|---|
| 著者 | 池井戸 潤 |
| 出版社 | 集英社 |
| レーベル | 集英社文庫 |
| 発売日 | 2019年6月21日 |
| ページ数 | 752ページ |
| 冊数 | 1冊で完結 |
ページ数だけ見ると分厚いですが、上下巻には分かれていません。この1冊で結末まで読み切れます。
小説『陸王』のあらすじ
舞台は現代の日本、埼玉県行田市です。ここにある「こはぜ屋」は足袋づくり百年の歴史を持つ老舗ですが、実態は従業員二十名の零細企業で、業績はジリ貧が続いていました。
四代目社長の宮沢紘一は、日々の資金繰りに頭を抱えています。銀行から融資を引き出すのにも苦労する状態で、足袋だけで会社を続けていく見通しは立ちません。
そんなある日、宮沢はふとしたことから新しい事業計画を思いつきます。長年培ってきた足袋づくりのノウハウを生かして、ランニングシューズを作れないだろうか。裸足の感覚に近い靴なら、大手にはないものが作れるのではないかという発想でした。
宮沢は社内にプロジェクトチームを立ち上げ、開発に着手します。しかし、その前には次々と壁が立ちはだかりました。資金難、素材探し、そして困難を極めるソール(靴底)の開発です。
行く手をふさぐのは技術やお金の問題だけではありません。世界的なスポーツブランドとの熾烈な競争があり、大手シューズメーカーからの妨害も加わります。それでも従業員二十名の地方の零細企業が、一世一代の勝負に打って出ます。
小説『陸王』はこんな人におすすめ
小説『陸王』は、こんな人におすすめです。
- 通勤や通学の時間を使って、長い小説を腰を据えて読みたい人
- 会社や仕事を舞台にした小説を探している人
- 分厚い本を買う前に、読み放題で試したい人
- ものづくりや職人の仕事に関心がある人
分量はありますが、足袋づくりから靴底の素材探しまで、仕事の手順そのものが物語の中心にあります。会社ものが好きな人ほど進みが早いはずです。
逆に、短い時間でさっと読み終えたい人には、この分量はやはり重く感じるかもしれません。
小説『陸王』を読んだ感想
筆者が読んだのは中高生のころで、通しで1回だけです。それきり読み返していないので、ここから書くのは当時いちばん強く残ったところになります。
よかったところ
いちばん引き込まれたのは、銀行に融資を断られたあとの巻き返しでした。宮沢が自分の足で資金の当てを探して動き回るので、社長がここまで走り回るのかと驚いた覚えがあります。
断る側の銀行にもちゃんと言い分があると分かる書かれ方だったのも、記憶に残っています。相手を悪者として片づけていないぶん、こはぜ屋の苦しさが余計に重く感じられました。
こはぜ屋の人たちのなかでは、ベテラン職人が手仕事にこだわる姿がいちばん印象に残りました。新しいことをやろうとする社長と、これまでのやり方を守ってきた職人が同じ会社にいます。その距離感を読むのが面白かったです。
ものづくりの場面が細かいのもよかった点です。足袋を縫う工程やミシンの描写が具体的で、靴底の素材を探して試作を重ねるところも同じ密度で書かれています。工場の作業を横で見せてもらっているような気分で読みました。
合わないと感じたところ
入り込むまでには時間がかかりました。こはぜ屋の経営状態の説明が続くあたりと、銀行との最初のやり取りのあたりでは、読む速度がはっきり落ちています。
途中から展開が読めてしまう場面もあります。大手メーカーの妨害のしかたは、次に何をしてくるか見当がついてしまいました。ネタバレになってしまうので詳しくは書けませんが、終盤がどこへ向かうかについても、半ばあたりで予想がついてしまいました。
Audibleで小説『陸王』を聴いた感想
筆者が聴いたのは学生のころです。電車とバスでの移動中に少しずつ再生し、通しで1回、最後まで聴き終えました。

よかったところ
よかったのはナレーションです。宮沢とこはぜ屋の社員のやり取りでは、誰が話しているのかが声だけで分かりました。銀行の担当者との交渉場面も、立場の違いが声の調子で伝わってきました。
読み方は全体として淡々としています。混んだ電車のなかで聴いていても耳が疲れず、途中で音声を切りたくなることはありませんでした。
意外だったのは、文字で読んだときより情景が浮かんだことです。足袋工場のミシンの音や作業場の空気が、活字で追ったときよりはっきり立ち上がってきました。走る場面のスピード感も、耳で聴いたほうが速く感じました。
合わないと感じたところ
電車の乗り換えや人混みに気を取られると、話を聞き落としました。聞き落としたことに気づかないまま先へ進んでいたことも、何度かあります。
抜けた部分は、あとで紙の本と電子書籍で読み直しました。一度読んだことのある作品だったので戻る場所の見当はつきましたが、音声だけではじめて触れていたら分からないまま進んでいたはずです。
自分のペースで止まって考えられないのも、紙との違いでした。融資や返済、原価といった数字の話が出てきたときと、素材や靴底の技術的な説明のところでは、いったん止めて頭のなかで整理したくなりました。
小説『陸王』を無料で読む方法
小説『陸王』は、Amazonの読み放題と聴き放題のどちらにも対応しています。費用をかけずに読むなら、この2つの無料体験を使う方法があります。
Kindle Unlimitedで読む
小説『陸王』のKindle版は、Kindle Unlimitedの読み放題対象です(調査時点)。分厚い文庫を単品で買わなくても読めます。
Kindle Unlimitedには、はじめて使う人向けの無料体験が用意されています。無料体験の期間と、体験が終わったあとの月額料金は登録画面で確認してください。
読み放題の対象作品は入れ替わります。読みはじめる前に、商品ページで対象になっているかを確認してください。
Audibleで聴く
Audible版も配信されていて、こちらも聴き放題の対象です(調査時点)。ナレーターは高川裕也、再生時間は16時間45分です。
Audibleは初回30日間が無料で、無料期間内に退会すれば費用はかかりません。無料期間が終わると月額1,500円で自動更新されます。
再生時間から計算すると、往復1時間の移動なら17日ほどで聴き終わる分量です。
小説『陸王』に関するよくある質問
こはぜ屋にモデルはありますか?陸王は実話ですか?
実在の企業をそのまま描いた小説ではありません。ただし舞台の埼玉県行田市は、かつて足袋の生産量が日本一だった土地です。
著者は執筆前に、行田の足袋業者と藍染め業者の工場を実際に見学しています。ものづくりの手順が細かく書かれているのは、その取材があってのことでしょう。
小説とドラマで内容は違いますか?
出たのは小説が先です。単行本の発売は2016年7月8日で、映像化はそのあとになります。
原作は1冊で完結しているので、こはぜ屋の挑戦を最初から最後まで文章で追えます。どこがどう違うかは物語の展開に触れることになるため、この記事では書きません。
陸王に続編はありますか?
続編にあたる小説は見当たりません(調査時点)。シリーズ物ではないので、先に読んでおくべき池井戸潤作品もありません。
単行本と文庫版のどちらを読めばいいですか?
物語は同じなので、読みやすいほうを選んでかまいません。単行本は2016年7月8日発売の四六判で592ページ、集英社文庫版は752ページです。
持ち歩いて読むなら文庫版が扱いやすく、電子書籍で読むならKindle版が読み放題の対象になっています(調査時点)。
まとめ
小説『陸王』は、足袋づくり百年の老舗が持ち前の技術でランニングシューズに挑む企業小説です。舞台は埼玉県行田市、主人公は従業員二十名の会社を背負う四代目社長です。
筆者は序盤の資金繰りの説明で読む速度が落ちましたが、そこを越えてからは最後まで進みました。会社のなかで人が動く話が好きなら、分量ほどには重く感じないはずです。
Kindle Unlimitedの読み放題対象で、Audibleでも聴き放題の対象です。移動時間で長編を読み進めたい人は、無料体験から試してみてください。
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