2024年の本屋大賞を受賞した『成瀬は天下を取りにいく』は、書店で表紙を見かけて気になっている人が多い作品です。ただ、中学生が主人公の青春小説と聞いても、自分が読んで面白いのかは判断しづらいところでしょう。
本作は、滋賀県大津市に住む中学二年生の成瀬あかりが、閉店間近の百貨店に毎日通うと言いだすところから始まる物語です。文庫1冊で読み切れる分量で、文章も平易です。
この記事では、作品情報とネタバレなしのあらすじ、どんな人に向いているかを紹介します。筆者が大学生のころに読んだ感想と、Audibleで聴いた感想、無料で読む方法もまとめました。
ドラマ化や映画化はされているのか、続編はあるのか、読書感想文に使えるのかといった疑問にも最後で答えています。
小説『成瀬は天下を取りにいく』の作品情報
小説『成瀬は天下を取りにいく』の基本情報は以下のとおりです。読書感想文で必要になる書誌情報も、この表からそのまま拾えます。
| 書名 | 成瀬は天下を取りにいく |
|---|---|
| 著者 | 宮島未奈 |
| 出版社 | 新潮社 |
| レーベル | 新潮文庫 |
| 発売日 | 2025年6月25日 |
| ページ数 | 288ページ |
| 冊数 | 1冊で完結(「成瀬」シリーズ3部作の1作目) |
著者の宮島未奈は滋賀県大津市在住で、本作がデビュー作です。収録作の「ありがとう西武大津店」でR-18文学賞の大賞・読者賞・友近賞を三つとも受け、その後第21回本屋大賞の大賞にも選ばれました。
小説『成瀬は天下を取りにいく』のあらすじ
舞台は2020年、コロナ禍の滋賀県大津市。同じマンションで生まれ育った中学二年生の成瀬あかりと、幼馴染の島崎みゆき、この二人の物語です。
中学二年の夏休みが始まる日、成瀬は島崎に「島崎、わたしはこの夏を西武に捧げようと思う」と宣言します。大津にある百貨店の西武大津店が、閉店を間近に控えていました。
成瀬が考えたのは、閉店までのあいだ毎日その売り場に通い、ローカル番組の中継に映り続けるという計画でした。島崎は付き合わされる側にまわり、成瀬の夏を間近で見ることになります。
成瀬の思いつきは、その夏だけで終わりません。お笑いコンビ「ゼゼカラ」を組んでM-1に挑み、実験のためだと言って高校の入学式には坊主頭で現れます。
将来の夢は、二百歳まで生きること。やると決めたことを先に口に出しておく成瀬は、周りがどう見ていても足を止めません。
小説『成瀬は天下を取りにいく』はこんな人におすすめ
小説『成瀬は天下を取りにいく』は、こんな人におすすめです。
- 通勤や通学の細切れ時間で1冊読み切りたい人
- 後味の重い話を避けて、明るい小説を読みたい人
- 読書感想文の題材を探している中学生・高校生
文庫1冊で完結する分量です。中学生の成瀬と島崎のやり取りが中心なので、難しい言葉に引っかかって止まることがありません。読書から離れていた人が習慣を戻すきっかけにも使えます。
逆に、腰を据えて長い物語に沈みたい人や、はっきりした事件が起きる展開を求める人には物足りないかもしれません。
小説『成瀬は天下を取りにいく』を読んだ感想
筆者が読んだのは大学生のころで、通しで1回です。そのあとAudible版で聴き直したので、紙で読んだのはこの1回だけになります。
よかったところ
いちばん面白かったのは、成瀬が次に何をしでかすか予想がつかないところです。閉店間近の西武大津店に毎日通うと言いだした時点でもう先が読めず、短い話が次々と切り替わるので手が止まりませんでした。
感心したのは、その突飛な行動があとの話で効いてくる作りです。ゼゼカラでM-1に挑む話や、入学式に坊主頭で現れる話まで読み進めたところで、あの夏の西武大津店の一件が、あとの話と地続きだったと分かりました。
成瀬のブレなさも印象に残りました。やると決めたことを先に口に出しておいて、届かなくても落ち込みません。他人の目を気にしないので、周りがあきれていても手を止めないところが気持ちよかったです。
語り手の島崎みゆきも好きでした。成瀬にツッコミを入れるテンポが小気味よく、それでも止めずに見守る距離感が心地よかったです。
周りの大人が成瀬を子供扱いせず、まともに相手にするのも読んでいて救われました。
大津の街の書き方は、いまでも頭に残っています。閉店間近の売り場の空気やローカル番組の中継の様子が具体的で、膳所のような地元の地名がそのまま出てくるのも、土地の手ざわりまで伝わってきました。
合わないと感じたところ
序盤は入り込むまで時間がかかりました。島崎の語りの調子に慣れるまでが読みづらく、大津や西武大津店の事情が分からないうちは置いていかれる感じがありました。
中盤で読む速度が落ちたのも覚えています。高校生活の日常が続くあたりと、成瀬以外の人物が語る話では集中が切れて、一度読むのをやめて日を置いてから戻りました。
Audibleで小説『成瀬は天下を取りにいく』を聴いた感想
紙で読んだあと、大学生のころにAudible版を通しで1回聴きました。片道30分ほどの通学の電車やバスと、家事や散歩をしながらの時間に流していました。

よかったところ
ナレーションの鳴瀬まみは、想像していたよりずっとよかったです。成瀬と島崎の声がはっきり分かれていて、周りの大人たちも聴いているだけで区別がつきました。
声に乗る感情の強さも忘れられません。成瀬が宣言するセリフや島崎の語り、二人の掛け合いのところでは、電車のなかなのに意識が物語のほうへ持っていかれました。
意外だったのは、文字で読んだときより情景が浮かんだことです。同じ場面なのに、耳で聴くと大津の街のほうが先に立ち上がってきました。速度は等倍のまま、最後まで聴き通しました。
合わないと感じたところ
聞き落としたところを戻すのが手間でした。止めて巻き戻して聴き直すのですが、電車の乗り換えのタイミングだと降りる支度で手がふさがっていて、その操作ができません。
家事をしながら聴いているときも同じでした。戻したい場所を頭に置いたまま先へ進むことになり、もどかしさが残りました。
小説『成瀬は天下を取りにいく』を無料で読む方法
小説『成瀬は天下を取りにいく』を費用をかけずに読むなら、Audibleの無料体験を使う方法があります。
Audibleでは聴き放題の対象です(調査時点)。再生時間は5時間4分です。
Audibleは初回30日間が無料で、無料期間内に退会すれば費用はかかりません。無料期間が終わると月額1,500円で自動更新されます。
再生時間から計算すると、往復1時間の通勤や通学なら5日ほどで聴き終わる分量です。
シリーズの2作目『成瀬は信じた道をいく』と3作目『成瀬は都を駆け抜ける』も、同じくAudibleで配信されています。
小説『成瀬は天下を取りにいく』に関するよくある質問
ドラマ化や映画化はされていますか?
実写のドラマや映画にはなっていません(調査時点)。映像化のかわりに、2026年7月に山下美月主演で舞台化されています。2025年9月には朗読劇も上演されました。
漫画版は『成瀬は天下を取りにいく』全3巻としてバンチコミックスから出ています。
続編はありますか?
あります。「成瀬」シリーズは本作から始まる3部作で完結しています。
2作目が『成瀬は信じた道をいく』、3作目が『成瀬は都を駆け抜ける』です。刊行順にそのまま読み進める形になります。
Kindle Unlimitedで読めますか?
Kindle Unlimitedの対象外です(調査時点)。読み放題では読めないため、Kindle版は単品購入になります。
読み放題の対象作品は入れ替わるため、購入前に商品ページで確認してください。冒頭だけであれば、Kindleストアの無料サンプルで試し読みできます。
読書感想文に使えますか?
分量は文庫版で1冊完結なので、長編に比べれば読み切りやすい部類です。中学生が主人公で、難しい言葉も出てきません。
ただし課題図書の指定がある場合もあるため、書き始める前に学校の条件を確認してください。
実話ですか?
フィクションです。成瀬あかりや島崎みゆきは作中の人物で、実在の人物をモデルにしたという説明は公式に出ていません。
舞台になっている滋賀県大津市は、著者の宮島未奈が暮らしている街です。
単行本と文庫版で内容は違いますか?
物語は同じです。違いは、文庫版に森見登美彦の解説が付いたことです。
単行本は2023年3月17日発売の四六判208ページ、文庫版は2025年6月25日発売で288ページあります。判型が小さくなったぶん、ページ数が増えています。
まとめ
小説『成瀬は天下を取りにいく』は、滋賀県大津市の中学二年生・成瀬あかりと幼馴染の島崎みゆきを描いた、宮島未奈のデビュー作です。2024年の本屋大賞に選ばれ、文庫版は1冊で完結します。
成瀬が次に何をするか予想できない面白さと、島崎が見守る距離感が読みどころでした。序盤と中盤で読む速度が落ちた箇所はありましたが、通勤や通学の細切れ時間で進めるのに向いた分量です。
Kindle Unlimitedの対象外ではあるものの、Audibleでは聴き放題の対象です。移動中に物語を進めたい人は、30日間の無料体験から試してみてください。
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