映画『言の葉の庭』を見て、小説版も読んでみたいと考える人は多いはずです。ただ、映画と同じ話を文章でもう一度たどるだけなのかは、買う前に気になるところでしょう。
小説『言の葉の庭』は、映画の監督である新海誠が自分の手で書いた小説版です。アニメには出てこなかった人物やエピソードが多数加えられていて、映像をそのまま文章に置き換えた本ではありません。
この記事では、作品情報とネタバレなしのあらすじ、どんな人に向いているかを紹介します。筆者が高校生のころから5回以上読み返した感想と、Audibleで通しで聴いた感想もまとめました。
映画との違い、同じ題名の小説が2種類ある理由、Kindle Unlimitedで読めるのかといった疑問にも最後で答えています。
小説『言の葉の庭』の作品情報
小説『言の葉の庭』の基本情報は以下のとおりです。読書感想文で必要になる書誌情報も、この表からそのまま拾えます。
| 書名 | 小説 言の葉の庭 |
|---|---|
| 著者 | 新海誠 |
| 出版社 | KADOKAWA |
| レーベル | 角川文庫 |
| 発売日 | 2016年2月25日 |
| ページ数 | 400ページ |
| 冊数 | 1冊で完結 |
著者の新海誠は、映画『言の葉の庭』の監督その人です。別の作家によるノベライズではなく、監督自身が書いた小説版にあたります。
小説『言の葉の庭』のあらすじ
舞台は現代の東京。靴職人を志す高校1年生・秋月孝雄と、謎めいた年上の女性・雪野、この二人の物語です。
孝雄は雨の朝になると学校をさぼり、街に出て時間を過ごすようになっていました。ある朝、雨をしのぐために立ち寄った静かな日本庭園で、先に来ていた年上の女性と顔を合わせます。
女性は平日の朝なのに仕事へ行かず、庭でひとり過ごしていました。孝雄は名前も職業も知らないまま、その場で短い言葉を交わします。
それから二人は、約束もしないまま雨の日だけ庭で会うようになりました。孝雄は誰にも話したことのない「靴職人になる」という夢を打ち明け、彼女が何かに深い傷を負っていることを知ります。
雨と緑に彩られた一夏が、二人の時間になっていきます。そして、梅雨は明けようとしていました。
小説『言の葉の庭』はこんな人におすすめ
小説『言の葉の庭』は、こんな人におすすめです。
- 通勤や通学の細切れ時間で1冊読み切りたい人
- 章が短く区切られた小説を探している人
- 複数の視点から書かれた小説が好きな人
- 映画では描かれていない人物の話も読みたい人
文庫1冊で読み切れる分量で、中身は全10話とエピローグに分かれた構成です。1話ずつが短いので、乗り物のなかで少しずつ読み進めても切れ目が分かります。話ごとに語り手が替わり、6人の登場人物の側から同じ夏が書かれます。
逆に、ひとりの主人公を最後まで追い続ける物語を読みたい人には、語り手が入れ替わる構成が落ち着かないかもしれません。
小説『言の葉の庭』を読んだ感想
筆者がはじめて読んだのは高校生のころで、当時は集中して何度も読み返していました。最後に読んだのは1〜2年前で、通算では5回以上読んでいます。
よかったところ
読み返してあらためて感心したのは、雨の朝の庭の描き方です。人のいない静かな朝に雨の音だけが変わっていく感じや、水に濡れた緑の色まで、頭のなかに絵が浮かびました。
対になっているのが、庭を出たあとの新宿の街や駅の風景です。一歩外に出たとたんに音と人が増えるので、孝雄が雨の朝だけあの場所へ通っていた気持ちが、自然に飲み込めました。
二人の心の動きの細かさも、読み返して印象に残った点です。孝雄が将来に向かって焦っている感じと、雪野が言葉にしないまま抱えているものが、それぞれ別の温度で書かれていました。
高校生のときに読んだときと、いまとでは、刺さる場所そのものが違いました。当時は孝雄の焦りばかりが目に入っていたのに、読み返して引っかかったのは、雪野や大人たちの生活のほうです。二人の距離の取り方も、高校生のころよりは飲み込めた気がしました。
合わないと感じたところ
引っかかったのは、語り手が切り替わるところです。誰の視点の話なのかがすぐに分からず、少し戻して読み直したことが何度かあります。人物の関係を頭のなかで並べ直しながら読んだ回もありました。
靴を作る場面の描写も、専門的で読む速度が落ちました。道具や工程の説明が続くところで、先へ進む勢いが一度止まっています。
Audibleで小説『言の葉の庭』を聴いた感想
筆者がはじめてAudible版を聴いたのは学生のころで、インターンの前後に乗った新幹線のなかで再生していました。一区間では聴き切れず、何回かの乗車に分けて通しで1回聴き終えています。再生速度は等倍のまま変えませんでした。

よかったところ
いちばんよかったのは、読み手の演技です。淡々と読み上げるだけの音声だろうと思って再生しはじめたので、想像と違って驚きました。
とくに引き込まれたのは、地の文で情景を読むところと、雪野の台詞です。新幹線の座席で聞いているのに、意識が庭のほうへ持っていかれました。
話ごとに読み手が替わるのも、聴いていて助かった点です。雪野の視点の話は花澤香菜が読むので、いま誰の側の話なのかを声で見分けられました。
合わないと感じたところ
紙の本といちばん違ったのは、自分のペースで止まれないところです。誰と誰がどう繋がっているのかを頭のなかで並べ直したくなったとき、止めて考える余裕がありませんでした。
語り手が切り替わるところは、何度か聞き落としました。走行音のなかで章の頭を聞き逃してしまい、あとで紙の本を開いて読み直しています。
小説『言の葉の庭』を無料で読む方法
小説『言の葉の庭』を費用をかけずに楽しむなら、Audibleの無料体験を使う方法があります。
Audibleでは聴き放題の対象です(調査時点)。再生時間は11時間7分です。
Audibleは初回30日間が無料で、無料期間内に退会すれば費用はかかりません。無料期間が終わると月額1,500円で自動更新されます。
再生時間から計算すると、往復1時間の移動なら11日ほどで聴き終わる分量です。
話ごとに分けた分冊版もAudibleで配信されています。1話ずつ区切って聴きたい場合は、そちらを選ぶ手もあります。
小説『言の葉の庭』に関するよくある質問
小説と映画で内容は違いますか?
同じ物語ですが、アニメには出てこなかった人物やエピソードが多数加えられています。完成した脚本を別の作家が小説にしたものではなく、映画の監督である新海誠が自分で書いた小説版です。
小説版は6人の登場人物を主軸にして書かれています。孝雄と雪野の二人だけでなく、周りの人物の側から見た同じ夏も読めます。
映画と小説はどっちが先ですか?
映画が先です。映画の公開は2013年5月31日、小説の単行本は2014年4月11日、角川文庫版は2016年2月25日で、小説は映画のあとに出ています。
物語は同じなので、映画を見てから読んでも筋が分からなくなることはありません。
『言の葉の庭』という小説が2種類あるのはどう違いますか?
書き手が違います。書名に「小説」が付く『小説 言の葉の庭』が新海誠監督自身の小説版で、「小説」が付かない『言の葉の庭』は加納新太による別のノベライズです。
加納新太版は2017年8月2日発売で、原作のクレジットが新海誠、著者が加納新太になっています。汐文社の「新海誠ライブラリー」からも同じ題名で出ていますが、そちらは本文が角川文庫版と同じ監督自身の小説版です。監督が書いたほうを読みたい場合は、著者名を確認してください。
Kindle Unlimitedで読めますか?
Kindle Unlimitedの対象外です(調査時点)。読み放題では読めないため、Kindle版は単品購入になります。
読み放題の対象作品は入れ替わるため、購入前に商品ページで確認してください。冒頭だけであれば、Kindleストアの無料サンプルで試し読みできます。
漫画版はありますか?
あります。作画が本橋翠、原作が新海誠で、講談社のアフタヌーンKCから全1巻で出ています。発売は2013年11月22日、196ページの1冊完結です。
読書感想文に使えますか?
文庫版は400ページの1冊完結なので、長編に比べれば読み切りやすい部類です。全10話とエピローグに分かれているため、1日1話ずつ進める読み方もできます。
ただし語り手が入れ替わる構成なので、誰の視点の話かを整理しながら読む必要があります。課題図書の指定がある場合もあるため、書き始める前に学校の条件を確認してください。
まとめ
小説『言の葉の庭』は、映画の監督である新海誠が自分の手で書いた小説版です。映画を見たあとに、孝雄と雪野の一夏をもう一度たどるのに向いています。
雨の朝の静かな庭と、そこを出たあとの新宿の街。その対比が丁寧に書き分けられているので、映像では流れていった時間を自分の速度でたどり直せます。
Kindle Unlimitedの対象外ではあるものの、Audibleでは聴き放題の対象です。移動中に物語を進めたい人は、30日間の無料体験から試してみてください。
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