「話せばわかる」と言うのに、何度説明しても通じない相手がいます。その理由を脳の働きから説明したのが、養老孟司の『バカの壁』です。
書名は知られていても、中身がどういう話なのかは伝わりにくい本でもあります。手に取るかどうかを決める前に、何が書いてあるのかだけ先に知っておきたい人も多いはずです。
この記事ではバカの壁の要約を、全8章から5つの主張に整理して紹介します。2003年に出た新潮新書で、脳科学や心理学の予備知識がなくても筋を追えます。
あわせて、結論を一言でまとめるとどうなるかと、読んだ内容を実生活でどう使うか、Audibleの聴き放題で無料で聴く方法までまとめました。
文庫版が出ていない本なので、紙で読むか、耳で聴くかを決めかねている人の判断材料にもなります。
バカの壁の結論を一言でいうと
この本の結論は、人は自分の脳に入ることしか理解できない、という一点です。まえがきに、その一文がそのまま置かれています。
結局われわれは、自分の脳に入ることしか理解できない。つまり学問が最終的に突き当たる壁は、自分の脳だ。
ここでいう「バカの壁」は、話が通じない相手の頭だけに立っている壁ではありません。自分の側にも同じ壁があり、そこで情報が止まっているという指摘です。
書名だけを見ると、物分かりの悪い人を笑う本のように読めます。中身は逆で、誰の脳にも入ってこない情報があるという前提から話が始まります。
読み終わって手元に残るのは、相手を説き伏せる技術ではありません。話が通じないとき、どこで情報が止まったのかを考える手がかりのほうです。
バカの壁の書籍情報
『バカの壁』の基本情報は以下のとおりです。
| 書名 | バカの壁 |
|---|---|
| 著者 | 養老孟司 |
| 出版社 | 新潮社 |
| レーベル | 新潮新書 |
| 発売日 | 2003年4月10日 |
| ページ数 | 208ページ |
| 冊数 | 1冊で完結 |
著者の養老孟司は解剖学者で、東京大学名誉教授です。1937年に鎌倉で生まれ、東京大学医学部を卒業したあと解剖学教室に入りました。
本書は2003年のベストセラー第1位となり、新語・流行語大賞と毎日出版文化賞特別賞、第38回新風賞を受けています。「バカの壁」という言葉が広く使われるようになったのも、この本がきっかけでした。
バカの壁の要約
『バカの壁』は全8章の新書です。章の中が短い小見出しで細かく区切られているため、数ページ単位で区切りながら読めます。
扱われている考え方は、大きく次の5つに整理できます。
- 人は自分の脳に入ることしか理解できない
- 関心のない話には、脳が「係数ゼロ」を掛けている
- 個性より先に、他人と共有できる部分が必要になる
- 変わらないのは情報のほうで、自分は日々変わっている
- ひとつの正解に寄りかかるほど壁は高くなる
人は自分の脳に入ることしか理解できない
第一章は「『話せばわかる』は大嘘」という宣言から始まります。
同じ話を聞いても、受け取る中身は人によって変わります。知りたくない情報、興味のない情報は、そもそも脳の中に入っていきません。
本が例に出すのは、イタズラ小僧と父親、イスラム原理主義者と米国、若者と老人といった組み合わせです。どれも話し合いが足りないのではなく、届いている情報の量がはじめから違っています。
話が通じない原因を、相手の理解力に置かない。ここがこの本の出発点で、続く第二章ではその届き方を式にして説明します。
関心のない話には、脳が「係数ゼロ」を掛けている
第二章では、脳の働きを一次方程式にたとえます。
入ってきた情報をx、そこから出てくる考えや行動をyとすると、あいだに係数aが挟まります。同じ情報が入っても、係数の大きさしだいで出てくるものは変わるわけです。
係数がゼロなら、どれだけ情報を入れてもyはゼロのままです。聞きたくない話が耳を素通りするのは、この状態にあたります。
逆に係数が極端に大きいのが、ひとつの情報だけですべてが決まってしまう状態です。本はこれを原理主義と呼びます。壁は無関心の側にも、思い込みの側にも立つという見方になります。
個性より先に、他人と共有できる部分が必要になる
第三章の題は「『個性を伸ばせ』という欺瞞」です。
個性は教育で身につけるものではなく、放っておいても消えないもの。足りないのはむしろ、他人と同じものを同じように受け取れる部分のほうだ、というのが第三章の立場です。
章のなかでは、共通了解という言葉や、松井秀喜やイチローの名前も出てきます。個性の話と、技術を身につける話を切り離していく流れです。
伸ばすべきなのは個性ではなく、共有できる部分。教育をめぐるこの逆転が、第三章の主張になります。
変わらないのは情報のほうで、自分は日々変わっている
第四章の題は「万物流転、情報不変」です。
ふつうは、自分は変わらずにいて、周りの情報のほうが移り変わると考えます。本の見方は反対で、文字になった時点で情報は動かなくなり、変わり続けるのは自分の側だとします。
章のなかで引かれるのは『平家物語』や『方丈記』です。何百年も同じ文章が残っているのに、それを読む人のほうが入れ替わっていく、という対比です。
この見方に立つと、「私は私」という感覚のほうが怪しくなります。昨日の自分と今日の自分は同じではない、という話につながっていきます。
ひとつの正解に寄りかかるほど壁は高くなる
最終章の題は「一元論を超えて」です。
一元論は、ものごとを1つの原理で説明しきる考え方を指します。分かりやすいぶん、そこから外れる情報が入ってこなくなるわけです。
第五章で扱われる身体や共同体の話も、ここへつながります。頭の中だけで完結させず、体を動かすことや人と暮らすことを通して、別の入り口を残しておくという流れです。
壁をつくるのは知識の不足ではなく、受け取り方のほうです。だから本の着地点は、賢くなれではなく、自分にも壁があると知っておけ、というところになります。
バカの壁を実生活でどう活かすか
読んだあとに手をつけやすいのは、次の3つです。
- 話が通じなかった場面を書き出して、どこで止まったかを見る
- 意見の合わない記事を、月に1本だけ最後まで読む
- 判断に迷ったら、机から離れて体を動かしてから決める
1つめは紙に書き出すと早いです。かみ合わなかったやり取りを1件ずつ並べ、相手が受け取らなかったのか、自分が受け取らなかったのかで印を付けていきます。
2つめは係数をゼロにしない練習にあたります。読む前から結論が決まっている話題ほど効くはずです。最後まで読んだうえで、それでも同意しないと決めるところまでを1本と数えます。
3つめは分かりにくいところです。本が身体の話に紙幅を割いているのは、頭の中だけで考えると答えが一元論に寄っていくためで、散歩や片づけのあとで決め直すと結論が変わることもあります。
ただし3つを同時に始めると続きません。1つめの書き出しだけを1週間試すところから入るのが現実的です。
バカの壁はこんな人におすすめ
『バカの壁』は、こんな人におすすめです。
- 職場や家庭で、話が通じない相手に消耗している人
- 通勤や通学の細切れ時間で、1冊読み切りたい人
- 新書をまだ読み慣れていない人
208ページで、章の中が短い小見出しに区切られています。数ページで一区切りつくので、電車のなかで少しずつ進めても話を見失いません。
逆に、明日から使える手順やテンプレートを持ち帰りたい人には向きません。書かれているのはものの見方で、何をするかは読んだ人が決める作りになっています。
バカの壁を無料で聴く方法と読む方法
『バカの壁』を費用をかけずに楽しむなら、Audibleの無料体験を使う方法があります。
Audibleでは聴き放題の対象です(調査時点)。朗読は斉藤マサキ、再生時間は5時間24分です。
Audibleは初回30日間が無料で、無料期間内に退会すれば費用はかかりません。無料期間が終わると月額1,500円で自動更新されます(調査時点)。
再生時間から計算すると、往復1時間の通勤や通学なら6日ほどで聴き終わる分量になります。
紙や電子で読む場合は単品購入です。読み放題では読めないため、文章で読むなら無料の手段はありません。
聴き放題の対象作品は入れ替わります。聴きはじめる前に、商品ページで対象かどうかを確認してください。
バカの壁に関するよくある質問
Kindle Unlimitedで読めますか?
Kindle Unlimitedの対象外です(調査時点)。読み放題では読めないため、Kindle版は単品購入になります。
読み放題の対象作品は入れ替わるため、購入前に商品ページで確認してください。冒頭だけであれば、Kindleストアの無料サンプルで試し読みできます。
文庫版は出ていますか?
文庫版は刊行されていません(調査時点)。新潮社が用意しているのは新書と電子書籍の2つで、判型を選ぶ余地はありません。
持ち運びやすさで選ぶなら、電子版かAudible版が候補になります。
『超バカの壁』とは何が違いますか?
扱う高さが違います。『バカの壁』がものの見方そのものを説くのに対し、『超バカの壁』は個別の問題に答える形です。ニートや「自分探し」、少子化、靖国参拝といった話題が並びます。
『超バカの壁』は2006年1月17日に出た192ページの新潮新書です。読む順番としては、考え方の土台にあたる『バカの壁』が先になります。
何歳から読めますか?
中学生以上なら文章そのものは読めます。1文が短く、脳や解剖学の専門用語もほとんど出てきません。
ただし話題は教育や宗教、経済にも広がります。手応えが出やすいのは、話が通じない相手に実際に困った経験があるあとです。
読書感想文に使えますか?
使えます。1冊で完結する新書で、章ごとに主張がはっきりしているため、どこを取り上げるかを決めやすい本です。
ただし物語ではないので、筋を追って書く形にはなりません。自分が壁を感じた経験と、本の主張を並べる書き方になります。
課題図書の指定があることもあるため、書き始める前に学校の条件を確認してください。
まとめ
『バカの壁』は、人は自分の脳に入ることしか理解できない、という一点を8つの章で説く本です。脳の中の係数から始まり、個性や身体、共同体を通って、一元論を超えるところに着地します。
考え方の本なので、読んだだけでは何も動きません。かみ合わなかったやり取りを1件書き出して、どこで情報が止まったのかを見るところからで十分です。
Kindle Unlimitedの対象外ではあるものの、Audibleでは聴き放題の対象です。新書1冊ぶんの短さで通勤の数日ぶんに収まるので、移動時間に読書をあてたい人は30日間の無料体験から試してみてください。
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